数年前に娘が大学の工学部に進学した時の話ですが、入学式で学部長がこういう話をしてたんです。
『工学とは理学などの基礎理論を、どうやって人の役にたてるかを考えて、社会を豊かにするための学問だ。』
たまに耳にする ”ソサイエティ5.0” ということも言われてましてね。
『これからの社会は、通信やAIなどの新しい技術と、ソサイエティ5.0の指針に沿って、驚くほど変化していく。今までにない新しい社会の仕組みや生活スタイルがたくさん出てくる。我々はその変化に順応して、社会を豊かにしていける人材を育成している。』
いやぁ、大学っていいなって、初めて思いました。
ちなみに、ソサイエティなんとかっていうのですね、総務省が出している、今後の社会のあり方の指針ですけど、これに沿って補助金を出したりして、世界に遅れないように、日本の社会を誘導していくわけです。
そして今、その要である通信技術が第4世代から第5世代に変わろうとしてます。5Gって言ってるやつですね。細かく言及しませんが、今回は、通信速度が早くなるだけの変化ではなく、情報処理のあり方を大きく変える変化になります。
”ソサイエティ5.0” とは、”サイバー空間とフィジカル空間が融合した社会” だそうで、つまりは現実社会の『在りよう』をデータ化するんです。『在りよう』っていうのは、なんの情報が、どこで、どんな条件で、どれだけ発生して、それらがどう相関しているかってことです。
それらに対して、問題解決のためのシミュレーションを幾通りも行い、最適な設定を現実社会のインフラに反映させる。これをするのは、もちろんAIです。要は、人知を越えている量の情報から、どんな風が吹けば、何屋が儲かるかがあらかじめ予想でき、買い占め…いやいや増産を行うとか。
恵方巻きやクリスマスケーキは廃棄されませんし、電車の混み具合も一定になるようにダイヤを変更できるし、
エネルギー資源も適切に配分できるようになって、貧困問題も解決すると。
こういうスマート国家、スマートシティを誘導したい訳で、今はその新しい社会への過渡期であって、そこらじゅうにチャンスが転がっている、とてもエキサイティングな時代ってことです。
『やさしく温かなデジタル』という言葉ですが、そんな可能性の時代にあって、今のまま、生産性向上や効率化を追求し続けると、『冷たいデジタル社会』になるという警鐘に思えませんか。
他人を出し抜くためにシステムを作る。
システムを動作させるために、人があたふたする。
私も片棒を担いでるのですが、従業員をシステムの一部と考えるわけです。
そして、思ったんです。
一企業のためにではなく、社会のために何かできないかと。
『やさしく温かなデジタル社会』 にするために、人々の日常生活に目を向けなければと。
キーワードは、人との繋がり方、情報格差、地域活性化だと思っています。
情報化社会での歪みだと思うのですが、ITリテラシーの差は生活の質を大きく左右し、特に若い方の多くは、ネット上の見せかけの繋がりに翻弄され、地域コミュニティを気にしていませんし、また、動画投稿など情報ビジネスで安易に儲けることに執着しています。
また、個人的には、『やさしく温かなデジタル社会』っていうコンセプトは、地方都市のほうが成長する可能性があるのではと思ってます。というのも、もちろん裏付けの無い偏見なのですが、都会で暮らす人は、『他人とは極力関わらずに済む、機能的で便利なデジタル社会』を多数決的には、選んでしまうのではないでしょうか。
みなさんも、たまにはこんなことを考えてみてはいかがでしょうか。
ちょっと気持ちが豊かになるかもしれませんよ。
ありがとうございました。